配偶者に配慮、遺産分割から住居除外

遺産分割の規定の見直し

 相続法制の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)の部会は、婚姻期間が20年以上の夫婦のどちらかが死亡した場合、配偶者に贈与された住居は遺産分割の対象にしないというふうに、従来の遺産分割の規定を見直す試案をまとめました。

配偶者に配慮した試案のイメージ

遺産分割の見直しの経緯

 遺産分割は、被相続人(亡くなった人)が所有していた現預金、有価証券、不動産などの遺産を相続人で分ける制度です。例えば夫が亡くなり、配偶者(ここでは妻)と子どもが相続人の場合、配偶者が1/2を相続し、残り1/2を子どもの人数で分けることになります。

 現在の制度では、居住用の土地と建物は遺産分割の対象となります。被相続人が遺言で「住居は遺産にしない」などの意思表示がなければ、生前贈与をしていたとしても相続人で住居を含めた遺産分割を行うことになります。

 住居以外の財産が少ない場合、残された配偶者が遺産分割のために住居の売却を迫られ、住まいを失う恐れがありました。高齢化が進むなかでこのような問題はさらに増える見通しで、法制審議会は対応策を検討していたということです。


配偶者のメリット

 試案の内容は、居住用の土地と建物を配偶者に贈与した際に、それ以外の遺産を相続人で分け合うということです。結果、配偶者は住居を離れる必要がなくなるだけでなく、他の財産の配分が増えて生活が安定するといったメリットがあります。

 ただし適用には条件があり、①夫婦の婚姻期間が20年以上②配偶者に住居を生前贈与するか遺言で贈与の意思を示す、の2つです。

 部会では、昨年6月、一定の婚姻期間が経過した夫婦の場合の法定相続分について、現行の「配偶者1/2、子ども1/2」から「配偶者2/3、子供1/3」に引き上げる試案を公表しましたが、この時のパブリックコメントで、「引き上げの根拠が不明」などの反対が多数を占めたため今回の試案を示したということです。

 このほか、部会は、昨年12月に最高裁が「被相続人の預貯金は遺産分割の対象」との判断を示したことを受けて、遺産分割の協議中でも預貯金を葬儀費用や生活費用に充てる仮払いを認める制度の創設も盛り込んでいます。


今後の流れ

 法務省は8月上旬から約1ヵ月半の間、パブリックコメント(意見公募)を実施し、年内にも要綱案を作成、そして来年の通常国会で民法改正案の提出を目指すとのことです。


遺産分割とは

 被相続人が死亡時に持っていた財産(現預金、有価証券、自動車や骨董品などの動産、不動産等)を複数の相続人で分配する制度。法定相続分などを基に相続人の話し合いで分配の仕方などが決められる。協議がまとまらなければ家庭裁判所の調停や審判に移る。相続人に対する生前贈与などがあった場合、原則として遺産とみなされる。


彦根市 地域情報
地域情報TOPへ