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保証人と連帯保証人との違い


保証契約書

 保証人連帯保証人とは異なり、連帯保証人の方が保証人より重い責任が生じます。実際の契約は、たんなる保証人であることは少なく、ほとんどが連帯保証人とされます。


1.保証と連帯保証の違いとは

 保証連帯保証も、いずれも本来の借主(以後「主債務者)の代わりに借金を支払う(債務を履行する)点では変わりはありません
 但し、保証人は、借主が借金を支払えないときにはじめて責任をます。つまり、二次的な責任を負うのにすぎない。

 それに対し、連帯保証人は借主と同じ立場で責任を負います。つまり、一次的な責任を負うことになります。


2.貸主が保証人に対して債務の履行を請求してきた場合

(1)保証人の場合

 ただの保証人の場合は、貸主が、主債務者より先に、保証人に債務の履行を請求してきたときは、保証人は、貸主に対して先に主債務者の方に請求してくださいと主張することができます。

 この主張を「催告の抗弁」といいます。このことが保証人が二次的な責任(まずは、主債務者に請求してくださいと言えること)を負うということです。

(2)連帯保証人の場合

 連帯保証人の場合は、保証人のように催告の抗弁はできません

 連帯保証人は主債務者と同じ立場で支払義務を負うものです。

 つまり、貸主は、主債務者、連帯保証人のいずれに対して先に請求するかを自由に選べるます


3.貸主からの保証人に対する強制執行

 貸主が、主債務者および保証人に対し債務名義判決和解調書強制執行受諾文書のある公正証書などのように強制執行によって実現できる権利のあることを公に証明する文書)を有しているときは、貸主は主債務者、保証人いずれに対しても強制執行を申し立てることができます。

(1)保証人の場合

 ただの保証人であれば、貸主が主債務者より先に保証人に対して、強制執行をしてきたときは、保証人は、主債務者に先に強制執行をしてくださいと主張ができます。但し、主張するときには、保証人は、主債務者に返済するだけの資力があることを証明しなくてはなりません。これを「検索の抗弁」といいます。

(2)連帯保証人の場合

 連帯保証人の場合は、検索の抗弁ができません。連帯保証人が主債務者と同じ立場で支払義務を負うというところからくる帰結です。

 したがって、連帯保証の場合は、貸主は、主債務者、連帯保証人のうち、どちらかを選んで強制執行をすることができます


4.他に保証人がいる場合

 他に保証人がいる場合は、ただの保証人は主債務者の債務(例えば100万円)を保証人の数で割った額を返済すればよいことになっています。
例)保証人が2人だとすると、100万円÷2人=50万円

 このように保証人が多いほど保証債務の範囲が少なく済む利益のことを「分別の利益」といいます。

 ところが連帯保証人です。連帯保証人には分別の利益もないのです。よって、貸主は連帯保証人が2人以上いれば、その各々に対して債務額全額を請求できるのです。


5.保証契約において保証人として注意する点

 貸主には主債務者の返済状況について保証人に情報提供する義務がありますので、貸主に問い合わせしてみてください。特に、連帯保証人になった場合は、主債務者が約束どおり返済しているか、また、滞納していないかを把握しておきたいものです。

 なお、返済が滞っていたのに借主が保証人に一定期間内に連絡しなかった場合、貸主はそれまでに発生した遅延損害金を保証人に請求することはできません。

(1)履行状況に関する情報提供義務

 従前の民法では、主債務者の返済状況や借金の残額などの情報について、保証人が貸主から情報提供を受けることができるか否か特に定めがありませんでした。

 これらの情報は、主債務者の信用に関わる個人情報でもあるため、主債務者の同意なく、保証人に情報提供すること守秘義務個人情報保護に反するとされる可能性があり、貸主としては保証人からの問い合わせがあっても情報提供するかどうかの判断に迷うところでした。

 しかしながら、平成29年に民法が改正令和2年4月1日施行)され、保証人が主債務者の委託を受けて保証をした場合には、貸主は、保証人から求められたときは、遅滞なく、主債務者の履行状況と元本や利息、遅延損害金などの残額等について情報提供しなければならないとする情報提供義務が定められました。

 なお、貸主が情報提供を行わなかったことによって保証人に損害が生じた場合は、契約にもとづく貸主の義務の不履行(いわゆる「債務不履行」)にあたるため、保証人に損害が発生した場合は貸主に賠償を請求できることになります。

 以上のとおり、保証人は、主債務者が滞りなく返済を続けているか貸主から状況を教えてもらう権利があるので、まずは貸主に問い合わせてみましょう。

※賃料債権など、一般の大家さんでは、民法が改正されたこと自体を知らない方がいらっしゃるので、知

 らない方には反対に教えてあげましょう。

(2)すでに返済が滞っていた場合

 貸主に問い合わせをしたところ、ずいぶん前から主債務者の返済が滞っていて、残っている元金を一括で支払わなくてはならず、多額の遅延損害金が発生している状況であることが判明した場合、連帯保証人は遅延損害金を含めて全額支払わなくていけないのでしょうか。

 平成29年の民法改正により、主債務者が約束どおり返済を行わなかったことによって、残額を一括して支払わなくてはならない状況になった場合(「期限の利益の喪失」といいます)には、貸主は、期限の利益の喪失を知ったときから2か月以内に保証人に通知しなければならないこととされました()。貸主がこの通知を期限内に行なわなかった場合は、期限の利益を喪失したときから通知を実際に行なうまでに発生した遅延損害金を保証人に請求することはできません

 なお、この通知は、2か月以内に債権者が保証人に発信するだけでは足りず、保証人に届いている必要があります

但し、家賃賃料債務は毎月払うもので、分割払いとして期限の利益が付されたものではないため、家賃賃料債務

 について直接の適用はないが、賃貸人・賃借人間で滞納賃料等を分割払いにする合意がなされたときは、期限の

 利益が付されたものとして、例えば、「2 回分の滞納賃料の支払いを怠ったと きは残額全額を直ちに支払わなけ

 ればならない」という約束を当事者間で行い、実際に当該支払いが 2 回分遅延したときには、賃借人は「期限の

 利益を喪失した」ことになる。


 その他、平成29年の民法改正により、極度額の定めがない個人根保証契約は無効になる等、比較的保証人に対して有利な改正となっています。

 保証人になったからには、ほったからしにするのではなく、債務の状況等を定期的に確認しましょう。


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